INDEX

|
INDEX
|
HOME
|

NO.0003/2001.05.25

土から放たれた場所へ -呼吸・時間・風-
加茂孝子+中川晶一朗
■中川晶一朗流アートへのテーゼ■ 

 5月20日(日)飯能市上直竹分にある展示スペース、O-NE・manokurozasuを訪ねた。この何とも不思議な響きを持ったネームが、間野黒指という地名に由来すると知ったのは、つい最近のことだ。
 O-NEのある集落は奥武蔵の中でも間違いなく秘境の部類に入る。飯能市内から幾つかの峠を越え、車でおよそ30分。沢沿いの林道を分け入ってゆくと、やがて道を挟んで杉の巨樹が迎える。鳥居のようにも見える。おそらく結界が張られているのだろう。車中からそっと頭を垂れ巨樹の間を抜ける。すると、今まで眼前に迫っていた谷が開け、急に明るい空間が広がった。僅かであるが、ここへたどり着くまでに感じた重い空気感が無くなり、五月晴れの似合うさわやかな風が吹いている。
 周囲を標高300m前後と思われる山々に囲まれたささやかな空間ではあるが、まさにここは桃源郷と呼ぶのがふさわしい土地に思われる。昨年、中川晶一朗氏の案内で旅した熊野古道、あるいは十津川村から、吉野へ抜ける界隈、更には宮崎、椎葉村をも彷彿させる、わずか10件あまりの集落。南向きの斜面に重なるように並ぶ家並みの最上部に、目指すO-NEはあった。大正か、昭和初期と思われる民家をそのまま利用した、週末だけの展示空間だ。
 谷の反響効果だろうか。やけにウグイスの声が響き渡る。この様子だと、夏の夜明け前30分間、蝉時雨はさぞや賑やかなことだろう。何しろ彼らは鳥の目覚めよりも早いのだから・・・

加茂孝子+中川晶一朗および、若き表現者たちが集って繰り広げる「土から・・・」プロジェクトはこのような場所で展開されていた。
続きはこちらをクリック  関連記事はこちら→

加茂孝子氏の作品は楮の繊維を使ったファインアートだ。上部中ほどの写真)O-NEの二階を利用した展示空間は南北の戸が外され、吹き抜ける風と共に揺らぐ様は、土から離れ彷徨う木霊たちがたわむれ遊ぶようにも思える。楮の繊維が光を受け、輝きを増す。(一番下)建物の外には樫と欅の大木がある。その緑と更に山並みが借景となり、抜群のロケーションだ。このような内と外との一体感を持った展示空間は幾らお金をつぎ込んだとしても、都会では不可能だ。
 アートは自然に根ざしてこそ、その神髄が発揮される。その意味で大変贅沢ともいえる空間と、見事に一体化した展示が進行する一方で、もう一つのプロジェクトが同時に展開していた。
(最上部左)先ずは山の神(右上・正しくは石神大明神。かつてこの辺りで石灰が採れたという。そのころ祀られたものか)に礼を尽くした後、三々五々、尾根や畑、路地などに散らばり、人に聴かせるでなく、自らの心の宇宙に向け、太鼓や笛を打ち鳴らす。(中程)

exhibition

「土から放たれた場所へ -呼吸・時間・風-」

art/加茂孝子 KAMO Takako
sound/中川晶一朗 NAKAGAWA Shoichiro
space/O-NE・manokurozasu
direct/捧公志朗 SASAGE Koshiro
〒357-0056 飯能市上直竹上分209 TAL//FAX 0429-77-3298


ここに掲載した文章はokumusashi.netが、画像はTATSUANG/新達也が著作権を所有します。したがって無断での転載、及び再利用は法律で禁じられています。
(c)2001 okumusashi.net