奥武蔵に限ったことではないが、近頃、シカが増えている。あるいは里付近に移動してきたのだろうか。
名栗村、有間ダム上流の林道へ良く出かけるが、夕暮れや、早朝、頻繁に遭遇する。10年前にはほとんど、見かけることがなっかたように思う。
嘗て奥武蔵の山中で出合うことは希だった。最もそれはわたしに限ってのことかも知れないが。時々、らしき声を聞いたり、突然走り去った影に、もしかして今のはシカだったかも知れないと思ったり。
ところが近頃は歩けばシカに当たるの如く、よく出没する。とは言ってもなかなか写真を撮るまでにはゆかないが、糞や、ねぐら、オス同士で争った痕跡など、山中に拡がっている山域もある。
NO.009でも書いたが、あの時は日没後の山道を裸足で歩いていたため、足音も無く、風も穏やかだったことも幸いし、相手がこちらに気づくのが遅れたのだろう。こちらの存在が何か判らないが、動くものが近づいて来る気配に、とりあえず、少し走ってみた。という様子だった。その、シカが2〜3回ギャロップする姿に反応して、わたしは体の動きを止め、ジッとシカの様子を伺った。走っている最中、シカはこちらの行動を見失ったらしく、すぐに立ち止まる。シカは動くものには反応するが、そうでないとなかなか認識できない様子。したがって、シカの行動を見てピタッと動きを止めたこちらの気配が良く分からない。辺りを見回しながら、幾度か警戒音を発してはいるが、逃げる様子はない。やがてこちらに向き直り、目と目が合う。いや、合ったと感じた。しかし、はっきり見破られた訳ではななさそう。何となくあの辺が怪しい・・・といった風でこちらの方を見ているたが、そのうち、何事も無かったように静かに歩き出していった。とりあえず、怪しい方角とは反対方向に。
そう、10年前はシカの気配を感じることすら難しかったように思う、近頃シカと人の距離感が詰まったのだろうか。それは、狩猟が禁止されるようになってから、徐々に改善された現象かもしれない。あるいはこちらが以前より自然界に対し、気配を消せるようになったのだろうか。けものにとっての不協和音を発しなくなっての結果だとしたら、嬉しい。